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KOMUIN Wiki

公務員でも自分らしく働く。やりたいことの本質と向き合い、新しい一歩を踏み出す。

interviewee

白玉 翠さん(神奈川県庁)

横浜市出身。教職員企画課、環境科学センターを経て現在は行政管理課にて庁内の働き方改革に取り組む。また、働き方改革プロジェクトチームの立ち上げにも携わり、自らも一員として活躍。業務時間外にも自主研究グループ「コミュニケーション技術研究会」や「プロジェクト33」を展開するなど、公私ともに幅広く活動している。

もっと知られてほしい身近な公務員を取り上げる"KOMUIN Wiki"。
今回は、業務内外で様々なチャレンジを行う神奈川県庁の白玉翠さんにお話を伺いました。

アイデンティティを見失っている時期もあった

神奈川県庁

―― 早速ですが、なぜ公務員になりたいと思ったのでしょうか?

入庁前は、10代の子ども向けの居場所づくりをしていたんです。子どもの話を聴いてあげられる大人になりたいと思ったのがはじまりでしたが、いざ現場で活動すると話を聴くだけでは何も解決できなくて…。

解決するには、社会の仕組みを変えないといけないと思い公務員を目指しました。

―― そうすると、これまでのキャリアは予想外だったのでは?

正直、アイデンティティを見失っている時期もありました。(笑)
それもあって環境科学センター所属のときに、1週間の民間企業派遣研修に手を挙げたんです。

―― 自治体ではよくある研修制度の一つですね。

はい。その頃はちょうど「働き方改革」が話題になり始めた時期で。ただ、自治体における働き方改革≒時間外削減みたいな風潮に違和感を覚えていました。

あとは、民間の業務改善の手法を知りたいなという思いもありましたね。

―― その経験もあって行政管理課に異動希望されたのでしょうか?

実は行政管理課に異動希望はしていなくて、異動したのは本当に偶然だったんですよ。

―― え!すごい偶然(笑)

ですよね(笑)
この経験は後の自主研究グループの立ち上げにもつながりました。

新しいことに挑戦するモチベーションとは

―― 行政管理課ではいろいろ新しい取組みを始められているとお聞きしています。

行政管理課では、庁内の誰でも参加可能な「働き方改革ワークショップ」の開催や“これさえ見れば庁内の働き方改革が全て分かる”をコンセプトにした「働き方改革通信」の作成、業務改善提案コーナーに寄せられる意見の実現に向けて関係課との調整などを担当しています。

―― 取組みの手応えはいかがですか?

たとえば、働き方改革ワークショップで「今、職場でこまっていること」というテーマを扱った時には、「他の職場の人に相談できてよかった」や「ワークショップでもらったアドバイスを実践しました!」というフィードバックをいただきました。

そういう、いわゆる「ナナメの関係」を組織内で築くことの効果を実感しています。

―― 確実に組織に好影響をもたらしていますね!それらの本業とは別に働き方改革プロジェクトチームの立ち上げにも携わられていたとお聞きしました。

そうですね。派遣研修をきっかけに知り合った先輩が中心となって、一緒に立ち上げました。メンバーは、庁内公募で若手職員を募りました。

―― チームとしてのアウトプットはいかがでしたか?

活動内容はチームで話し合って決めたのですが、WordやExcelの便利な使い方をまとめた「Office wiki」の作成や、若手職員のロールモデルに成り得る職員へ取材を行った「かながわワークスタイルインタビュー」の発行などをしました。

また、知事への提言をさせてもらい、いくつかは既に形となっています。たとえば、「神奈川県ナビゲーター制度」や「全庁共通業務の見直しワーキンググループ」の設立なども成果の一つです。

―― ゼロからイチを生み出しづらい行政組織の中で、所属でもプロジェクトチームでもそれだけのことを形にするのはとても苦労されたと思います。そのモチベーションの源は何だったのでしょうか?

なんだろう...過去の自分と同じように悩んでいる人の役に立ちたいという思いはあったかもしれません。

あとは単純に新しいことに挑戦する楽しさもあったと思います。

―― 「人の役に立つ」という社会貢献と「楽しい」という自己実現が上手く調和されているように感じますね。 それから白玉さんは業務外の時間でもいろいろされていますよね。 その一つに「プロジェクト33」というものがあります。

プロジェクトと言うと少し大げさですが、神奈川県内の33の市町村すべてを現地に詳しい方に案内していただきながら歩いて回るという目標を立てたんです。「現場を忘れないようにしよう」と思いながら公務員になったのに、意外に神奈川県のこと知らないなって(笑)

―― 特に本庁で勤務していると、意外に現場を知る機会って少ないものですよね。実際にやってみていかがですか?

まだ33すべての市町村を回れたわけではないですが、自分だけのプロジェクトではなくなってきている気はします。案内してくださる方にもメリットがないと続かないだろうと思っていたんですが、聞くと自分の故郷を知ってもらえて嬉しいと言っていただいたり、次の案内人を紹介してくれたり、あるいは次の街歩きにも同行していいですかと言ってくれる方もいらっしゃいます。

人の縁を紡ぐことができている感じがしますね。

自分のやりたいことの本質を考える

―― 様々な取組みをされている白玉さんにぜひ伺いたいのが公務員の働き方です。 ご自身も冒頭アイデンティティを見失っている時期もあったと話されていましたが、ジョブローテーションでなかなか希望の部署に配属にならず、自分らしい働き方を見失うケースは少なくないと思います。

大切なのは自分のやりたいことの本質を考えることだと思います。

仕事をするなかで、私のやりたいことの本質は「自分の力で自分の環境を変えられない人を、仕組みを変えることで幸せにすること」だと気づきました。それが入庁前は「子ども」だったのが、今は「職場で大変な思いをしている人」に変わっただけなんだと。 それと仕事だけで自己実現しようとしないことを心掛けています。

自分のやりたいことって意外にどこでもできると思うんですよね。

―― なるほど。確かにやりたいことの本質を辿ると、一見畑違いな業務でも自分のやりたいことから大きくは逸れていないケースって結構ありそうです。その点も含めてもう一つ伺いたいのが、今後の公務員に求められる資質についてです。

少なくとも自分が大事にしたいと思っているのは、「仕事を楽しむこと」と「対話のスキル」です。

これからは今回のコロナの件のように、トップや幹部職員でも対処できない課題が増えてくると思います。そのときに、みんなが自分らしく働いていて、それぞれの職員が得意なことを生かせている組織であることが理想だと思うんです。チームで個人の不足している部分を補いながら課題を解決していく。

そのために必要なのが、仕事を楽しむことと対話のスキルだと思っています。

―― 職員の天分が発揮されるような組織をどのようにつくるかは今後の自治体の大きな課題になりそうですね。最後に白玉さんにとって「自治体職員」とはどのような存在でしょうか。

「つなぐ人」です。

地域の課題を自ら解決するだけではなくて、官民問わずその課題に対して同じ問題意識を持っている人をつなぎ合わせる人。今はこれが一番しっくりきています。


取材をしていてとにかく活動の幅に驚かされました。改めて「まず行動すること」の大切さを教えていただいたように思います。

もしかすると自治体職員で自分のやりたいことをできている人はごく一部かもしれません。ただ、自分のやりたいことを抽象化してその本質を考えてみると、ひょっとすると目の前の仕事の捉え方も変わるのでは?と思いました。

白玉さんのますますのご活躍を期待しています!